予鈴が鳴ってそれぞれが席に着いていく。

クラスどころか学内が騒然とした教育実習生の白崎先生は、どうやらうちのクラスに来ることはないらしく、女子はがっくりと肩を落としていた。

私とは違う意味で。

確かに遠めに見ても端正に整った顔立ちだったから、みんなが騒ぎ立てる気持ちも分かる気がする。


けど、私は興味ない。

教壇に立った内田先生は順に出席をとっていく。

……そろそろ来る。

来た。


「春川〜」と先生が呼んで、私は体をピクリと反応させる。

毎日のことだけど、ハル君じゃないって、クラスメイトだって分かっていても、“ハル”って単語に反応してしまうんだ。

春とか晴とか、
貼るとか張るとか。

あー、このことといい、さっきのことといい、どうやら私は病気にかかってるみたい。

そうそう。

『ハル病』

気にしてないふりをしても、気になってるのが現状。

さすがにさっきのは期待してしまった分、違うと分かって堪えてしまった。

私には颯平がいるんだから。

いいじゃん……。

ハル君に会えなくたって。

そう思い込もうとしても、強力な菌は中々頭から離れてくれなくて、次第に会いたいと思う気持ちは強くなる一方だった。


気になりだしたら止まらない。

化学式が解けなくて、モヤモヤしている感じと似ている。

つまり……、
ハル君に会ってこの前の言葉の意味を教えてもらえれば、頭の中がすっきりしてこの気持ちに終止符が打てるはず。