「は? 誰それ!?」
「知らないの〜? この学校ではかなり有名な先輩だよ。みんなも知っているぐらいだし、ほらっ。品行方正、成績優秀、極めつけが顔!! そこいらの芸能人なんか並みじゃないってぐらいかっこいいんだから。
お姉ちゃんが彼と同級生で、この学校に教育実習に来るって情報も確かだし……ってみんなに言ったらこんな騒ぎになっちゃった」
「へぇー。その人将来は教師になりたいとか?」
「だといいのになぁ〜! 先生と禁断の恋、なんてのもアリじゃない?」
「興味ない。ね、紗夜香。……おーい?」
私の目の前を香里奈の手が何度も往復して我に返った。
頭の中でありえないことを考えてしまう。
もしかして、
もしかして……。
その“春斗”さんと言われる人が“ハル”君なんじゃないかって。
「あっ、あれじゃない!?」
一人の子が窓から体を少し乗り出して遠くを指差した。
私は反射的に席を立って窓枠に手をつき、体を乗り出して丁度校門をくぐってきたスーツ姿の男性を凝視した。
「紗夜香どうしたの?」
ドキドキする。
ここからじゃ顔が見えない。