一つ目の条件は、学校に絶対ばれないバイトをすること。
その理由はもちろん、校則で禁止されているから。
土曜の夜は早速情報誌を広げて、条件に当てはまるところに片っ端から電話していった。
「もう決まっていたり学校の許可がないと駄目って断られたり。そこも半分諦め気分で電話したら、日曜面接に来れますかって聞かれて、思わず『はい!』って返事しちゃって」
「で、結果待ち?」
「それがね……」
初めてのことばかりで、受験より緊張したかもしれない。
二つ返事で面接が決まった私は、日曜の朝早くに履歴書を買って写真を撮りに行った。
引きつっている自分の顔を見て失笑しながら、慣れない手つきで書く初めての履歴書は、何度失敗したことか分からない。
面接では緊張しすぎて、何を話したかさえ覚えていないし。
「えっ、もう決定したの?」
驚く香里奈にピースサインを作って笑みを見せる。
「夜には家に電話があって。採用だって! 日曜が初出勤で、その前に親と携帯買いに行くんだ」
よかったねーと香里奈は自分のことのように喜んでくれる。
そこまで話したところで、教室内がザワザワと騒がしいことに気付いた。
黄色い声が聞こえてきたかと思えば、数人のクラスメイトの女子が窓際に集まって、窓から何かを指差してキャーキャー言っている。
「どうしたの?」
そのうちの一人に香里奈が問いかけると、振り返った一人の子が少し興奮気味に目を輝かせて答えてくれた。
「今日から教育実習生が来るって言ってたじゃん! その中に“白崎春斗”さんがいるんだよ!!」