「あーもう、笑うなよ」
顔色を隠すように顔を伏せて、左手でちょっとクセっ毛の黒髪を掻きむしる。
ボサボサになった黒髪の間から見える耳は未だに真っ赤で、笑うなと言われたってそれは無理な話。
告白だって断ろうとしたんだ。
好きな人はいなかったけど、あまり知らない颯平と付き合うって何だか考えられなくて。
だけど不意に颯平を見た時。
今みたいに真っ赤な顔をして、目も合わせない姿に……胸がトクンッと音を立てた。
可愛いなぁって。
思わず頭を撫でたくなるほど。
「っ、おい。何してんだよ」
「可愛いなぁって思って」
「男に可愛いはないだろ……」
照れてうなだれる姿に、さらに笑みが零れる。
あの時はできなかったけれど、今はこうして頭を撫でている。
ちょっといじめがいのあるところも可愛くて。
俯いてブツブツと小言を言ってる姿なんて子どものようで。
「付き合ってよかった」
「今、何て言った?」
「秘密ー!」
初めはちょっとした興味だったんだ。
颯平のこと、もっと知りたいかもって。
胸が苦しくなったり切なくなったり、そんな激しい恋じゃないけれど。
颯平といると心が穏やかになって、一緒にいると安心できる。