その後は素早かった、というものじゃない。
肩にバッグをかけた優美は即座にその場に立ち上がり、
「じゃ、後は二人でごゆっくり〜。紗夜香また連絡するね!」
誰にも喋る暇を与えずテーブルを離れ、体を反転させるとそそくさと店を出て行った。
二人で口をポカンと開けて呆気にとられてしまう。
「プッ。何だあれ?」
「……さぁ?」
外に出て少し開放的になったのか、優美はガラス越しに私たちに向かって大きく手を振ってきた。
その姿に苦笑しながら小さく手を振り返す。
優美ってば言い逃げだし。
幸いにも颯平が問いただしてこないことにホッとする。
結局残された私たちは、四人がけの片側に並んで座るという不自然さのまま。
通路側に座る颯平が、そのうち反対側に移動するだろうと思っていた。
その時だった。
右足に妙な違和感を感じたのは。
コーラーを片手に持って、勢い良く飲んでいる颯平。
右手は確かに私の視界に映っている。
じゃ、じゃあ……。
今、私の右足に感じるこの温かな感触は。
何食わぬ顔で前方を見つめる颯平の、左肩から視線をゆっくり下げていく。
……。
えぇぇぇぇ!!