「私はてっきり、またハ……!!」
ゆ、ゆっ、優美ーっ!!
ハ!?
ハル君のことを考えてた?
と続けたかった!?
いやいやいや、それはここでは禁句でしょ。
それに気付いたらしき優美も、言葉を濁して手や視線がフラフラと宙を舞う。
この後どうしようかと、頭を悩ませているみたいに。
「はって何?」
ギクッ。
一瞬にして体中の血液が床目がけて引いていく。
私が聞かれているわけでもないのに、心臓がありえない早さで脈打っていく。
「ハ……」
「は?」
優美がこの後何て言うのかって気が気じゃない私は、颯平に気付かれないように小刻みに首を振る。
肝心の颯平はさほど言葉の続きを気にしている様子ではないのだけど。
まさか私が他の男が気になってるだなんて、微塵も感じていないだろうけど。
優美ーっ、うまくはぐらかして。
と、願うしかなかった。
「ハ……」
「だから“は”って?」
「ハ……、ハッヒフッヘホー」
「……」
ここだけ空気が一瞬にして固まった。
ひゅーっと音を立て、冷気が流れているように寒い。
寒過ぎる。
無言がつらかったのか、優美は顔を引きつらせながら笑ってごまかしていた。