一息ついて落ち着きを取り戻そうと試みる。
両手で頬杖をつき、二人が会話している様子をぼんやりと眺めてみた。
こうして見ていると、何だか高校生になったという実感が湧かなくて、まるで中学時代に戻ったかのような錯覚に陥る。
あの頃は、たまにみんなでファストフード店に溜まって外食をするのが最高の贅沢で、今日みたいにハンバーガーやポテト一つで何時間も粘っていたっけ。
確かに新しい環境には慣れてきたし、香里奈っていう気の合う友達もできたけど。
「へぇ〜。高校でもするんだ」
「やっぱり続けたくてな」
こうして地元の友達と集まっているほうが楽だし、やっぱり落ち着く。
聞いているようで聞いていない二人の会話を余所に、胸の奥から込み上げてくる懐かしさに酔い痴れる。
ガラス越しに光り差す春の西日が暖かくて、その気持ちにさらに拍車をかけて、私は完全に一人の世界に入り込んでしまった。
「ねぇってば、紗夜香!」
優美の張り上げた声で現実に引き戻され、敏感に反応してハッとしたのはすぐのこと。
二人の視線が私に集中していて、視線を泳がせて訳も分からず萎縮してしまう。