「大体さー」
だけどそれは隣から聞こえた声によって遮られてしまった。
瞬間、嫌な汗が流れだす。
いつの間にか戻ってきていた颯平の声に驚いて、言葉が止まり肩を震わせてしまったから。
き、聞かれていないよね?
「どうした?」
「ううん、何でもない!!」
慌てる私の様子を特段気にする訳でもなく、ハンバーガーを口いっぱいに頬張る颯平。
その間も私の心臓はドクンドクンと静かに、だけど力強く音を立てている。
「優美は突然なんだよ。紗夜香といるから今すぐ来い、だもんな」
苦笑する颯平を横目に、会話を聞かれていなかったのだと私は一人胸を撫で下ろしていた。
万が一聞かれていたら、問い詰められて自白して、私の行動を非難されて仲がこじれて……。
考えるだけでも恐ろしい。
それなのに想像してしまう。
もしこのことがばれて、颯平から別れ話を切り出されたらって。
胸が針で刺されたかのようにチクチクと痛みだす。
少し息苦しくなって肩を上下させて大きく呼吸する。
この胸の痛みが、紛れもなく颯平のことを好きなんだと、失いたくないんだと感じさせるんだ。