残っていた水を一気に飲んでポテトを流し込む。

その間「それにしても」と言って、優美が体を近付けてくる。

耳打ちするようなひそひそ声で、



「ハル君かっこいいし」



ウインクして肩をポンポンと叩いてきた。


あっ、まただ。

ハル君の名前を聞くだけで体が反応する。

こんなこと初めてかもしれない。



「生きる意味とか矛盾とか、言ってること何となく分かるなぁって。そんなことをさらっと言えるあたり、かっこいいよなって私だって思うし」

「えっ? 意味分かるの?」

「うん。何となくだよ?」



気付いたらその場に立って、テーブルに両手をついていた。

何で私が分からなくて優美が分かるの?

それがちょっと悔しい。



「その意味教えて?」



いくら考えても出てこない答えが、ハル君のことが気になる原因の一つなんだ。

うーんと唸りながら、優美は困ったような顔を見せる。



「それはハル君に聞かないと。確信はないから、言ってもね?」

「だって……。もう会うこともないし」

「名前しか知らないんだっけ?」

「うん……」



年齢もどこに住んでいるかも、何をしている人なのかも番号も、何一つ知らない。

ハル君と繋がるものはないんだ。