随分と歩いたところで、近くにアトラクションのない木陰の下にあるベンチに腰を掛けた。


深く息を吐き、脳裏に浮かぶのは“落ちた”っていう三文字。

考えたくなくて思い出したくなくて、忘れたいのに……。

ふとした拍子に思い出して、頭に焼き付いて離れない。


スクールバッグを強く抱き抱え、ベンチでうずくまって静かに目を閉じる。



「ねぇ、一人〜?」



そんな私の頭上から、何だか軽そうな声が聞こえてきた。



「あれ? その制服見たことないけど、どこの高校?」



私、まだ中学生だし。

頭で思ってはみても、口には出さずゆっくりと目を開けて顔を上げる。

年より上に見られるのはよくあることだった。

自分で言うのもどうかとは思うけど、目鼻立ちのくっきりした整った顔立ち。

少し色素の薄い髪は、陽に当たるとまるで染めているかのように明るく見える。

そんな見た目が、中学生らしくないらしい。


だけど中身が伴っているわけもなく、こういう時どう対応していいのか、未だによく分からない。