そんな勇気さえ携帯のバイブによって妨げられる。

テーブルの上で揺れ動き、少しずつ移動する携帯を優美は手に取り、それを開いてディスプレイを凝視する。

再び素早く何かを打って携帯を閉じると、今まで無表情に近かった顔が少し緩んだ。

それに少しホッとして、水を口に含む。


自業自得とはいえ、こんな重い空気はできることなら避けたい。

私のした行動に、優美は少し怒っているものだと思いこんでいた。

なのに。



「別に怒っているわけじゃないからね?」

「えっ、そうなの!?」



急にそんなことを言いだすからつい本音が出てしまい、慌てて口元を手で押さえてみても、時既に遅し。

周りの雑音に負けないぐらいの大声で笑われて、拍子抜けするぐらい和やかな空気に変わっていく。



「結果的には何もしていないから、ギリセーフでしょ」

「そういう問題?」

「そうだよ。何かしていれば紗夜香のこと軽蔑したかもしれないけど、まぁそんなこともあるよ」



一人で納得するかのように頷きながら、ポテトを食べ始めた。