「フフッ、ありがと。夢の為に頑張っているからね」
「夢?」
突然そんな言葉が飛び出して、私は驚きを隠せずに目を見開く。
駅のホームでは電車到着の放送が流れてベルが鳴り、程なくして電車がホームに到着した。
土曜日の午後は朝の通勤通学ラッシュと比べると、比較的人は少ない。
それでも空席はなくて、開いたドアとは反対側のドアの前に行き、スクールバッグを床に置いてドアに寄り掛かる。
「で、夢って?」
「社長夫人」
突然突拍子もないことを平然と言うものだから、開いた口が塞がらず。
香里奈は隣でクスクスと笑っている。
「だからね、社長夫人になる為にはいい男を捕まえないといけないでしょ! で、いい男を捕まえる為にはそれなりの出会いの場所が必要なわけで……分かる?」
私が頷くと満足をしたのか、微笑んで話しを続ける香里奈。
「だけど、どんなにいい出会いの場があっても、いい女じゃないと見向きもされないじゃない」
「うーん、それは言えるかも」
「でしょ! だから、公立の試験はわざと落ちたんだ」