「紗夜香帰ろー」
入学式から早一週間。
中学とは比べものにならないほどの怒濤のスケジュールをこなし、ようやく高校の生活リズムに少し慣れ始めた頃。
「ちょっと待って、今準備する」
大量の宿題が出されたとはいえ、待ちに待った週末がやってきた。
机の中の教科書をスクールバッグに詰め入れ、慌てて香里奈の後を追う。
「お待たせ」
「はぁー。やっと休みだね」
家から高校までは電車で三十分。
同じクラスで同じ路線の香里奈とは、入学してすぐに意気投合して毎日一緒にいるようになった。
明るくてハキハキしていて、
「何見てんの?」
「あ、いや。香里奈って綺麗だよなーって思って」
今まで見てきた同級生の中では群を抜いてトップ。
元々の素材がいいのはもちろんのこと、隅々まで手入れが行き届いているし、女に磨きがかかっている。
キューティクルのあるサラサラのロングストレートの髪は、思わず触りたくなるほどだし。
整った眉にクルッとした上向きの睫毛で目元はパッチリ。
肌はニキビ一つなくて美白で、透明なグロスが唇に潤いを与えている。
さらには、細長い指に磨かれた爪が女らしさを強調している。
スタイルだっていいし、思わず見とれてしまうほどだった。