「ハル君がシアトルに?」
「……うん、望さんに聞いたんだけどさ」
後日、あの日のことを優美に報告した。
改めて言葉にすると、何だかさらに実感してしまって落ち込みながら。
「そっかーシアトルかぁ……。で、シアトルってどこだっけ?」
「アメリカ!」
そんな優美の軽いボケっぷりに笑いながら、今日もまた公園のベンチに座っている。
ハル君に会える月曜が来るまでは長くて、だけど時が過ぎるのは早いと思う矛盾。
「それで紗夜香はどうするの?」
「まだ分からない」
そう。
未だに悩んでいる。
あれから一週間たっても、しつこいぐらいに答えは出ないまま。
「シアトルに行っちゃうのに? 伝えなくて後悔しない?」
「あー、香里奈にも同じようなこと言われた。“言わずに後悔するより言って後悔しなよ”って」
「アハハッ。らしい発言だねー」
それに相づちを打ち、軽く息を吐いて体の力を抜く。
ベンチに体重を預けて空を仰げば、目に映る鮮やかな深緑が騒めいている。
ザワザワ、ザワザワと。
心をかき乱す。
「好きなのにねー」
「うん。好き、だね……」
「難しいね、恋って」
「それでも恋しちゃうんだよね」