年を重ねたら大人になれると思っていた。
でも、大人って何だろうと思う。
生きていたら悩むことはたくさんあって、毎日が当たり前のように過ぎていく。
昨日と今日の私で何が変わったかって、そんなに大した変化もないだろう。
そうして明日が毎日やってきて。
けど……。気づいたら少し変わっていた。
「好き……」
ハル君が寝入っているのを確認して私は呟いた。
人生のどん底に落ちたと思い込んでいた時に出会ったハル君。
あれから約五ヶ月。
ハル君を好きになったきっかけなんて、今となっては思い出せない。
ううん、どれがきっかけだったか分からないんだ。
きっと、些細なこと。
だけどね、その時の私がハル君を好きになるのには十分だったんだよ。
タオルで汗を拭ってベッドに頭を乗せて、間近でハル君の寝顔を眺める。
ハル君に出会えてよかった。
そんなことを思いながら、気付いたら私も眠りについていた。
そして、どれだけの時を眠りについていたのだろう。
「……香」
誰かが私を呼ぶ声が聞こえてきて、重い目蓋を開いてみると。