ハル君が私の家庭教師をしてくれるのも八月いっぱい。

会えるのも残り数回。

別れへのカウントダウンは始まっている。


このままでいいのか。

そんなことは嫌でも考えさせられた。

だって、ハル君のいない生活なんて、ハル君が家庭教師に来ない月曜なんて、想像できないから。



「いつの間にか私の一部みたいになってたんだよね」



ハル君の言葉がハル君の行動が。

私の中で生きている。

私が変われたと言うのなら、背中を押してくれたのはそんなハル君の言動。



「そう言えば今日家庭教師の日だよね?」

「ううん、今日は休み」

「えっ? 何で?」

「ハル君がね……。あっごめん、電話みたい」



スクールバッグの中から伝わる振動に、携帯を取り出して開いてみる。

そして、指が止まった。



「出ないの?」

「……出る」



予想もしていなかった人からの着信は、ハル君に何かあったのかと結び付けてしまう。

うるさくなる鼓動。

ボタンに指を添えて、意を決して……押した。



『もしもし紗夜香ちゃん? 今から暇ある? ハル一人で寝込んでいるから、一緒にお見舞い行かない?』