優美は本当に、よく私のことを理解してくれている。

顔を近付け私の頬をつまむと、



「そんな顔してないじゃん? このままでいいだなんて思ってないんでしょ〜」



口を開いて白い歯を見せた。


挙動不審に揺れる瞳。

力なく緩む口元。

優美の瞳に映る私が、それが間違いでないと語っている。


少し長い瞬きをして息を吐きだした。



「そうだね……本当はハル君とこのまま離れるなんて嫌……」

「ったく〜、相変わらず中々素直にならないんだから」



そう言われたところで、アイスが溶けて垂れ始めていることに気付き、私も優美も慌てて食べだす。


日常は何も変わらず過ぎていく。

子どもたちの騒ぎ声、うるさいほどの蝉の鳴き声。

照りつける太陽、心地よい風。

制服を着て課外に行って、友達と遊んでバイトに行く。


変わったのは、そこに颯平という存在がいなくなったこと。

最後まで傷つけた私を、最後まで想ってくれた人。



「けど、やっぱり別れたばっかで次……なんてできないよ。颯平のこと考えると、悪い気がするし……」



視線を落とし、地面を眺める。

足元にできた小さな影。

それがじわじわと広がりを見せ、そのままのまれてしまいそうな……そんな感覚に陥る。


と、大げさなため息が聞こえ、顔を上げる。



「それって偽善じゃん」