ハル君が好き。
どうしようもなく好き。
颯平のことも好きだけど、それ以上にハル君の存在が大きくて。
不器用な私はこれから先も、嘘をつき続けられる自信がない。
だから、これから先ずっと傷つけるよりも。
今、傷つける選択をした。
「ごめん、お待たせ」
そう決心しているからか、さっきからまともに顔さえ見れない。
持ってきてくれたお茶やお菓子に、手さえつけられない。
何て切り出したらいいのかも分からず、妙にソワソワしながら颯平の話を聞いているかのように相づちを打つ。
相変わらず声のトーンも変わらない、いつも通りの颯平。
あの日のことには触れない颯平。
それが余計に痛々しくて、そうさせているのは自分なんだと胸を傷める。
言わないと。
颯平の為にも、私の為にも。
「ねぇ、颯平」
切り出したのは、家に来てから数十分たってからのことだった。
真正面から颯平を見据える。
「ん? どうした?」
と、颯平は立ち上がった。
それを目で追って、私はようやく気付く。
声のトーンとは裏腹に、颯平の顔からは一切の笑みが消えていることを。
ズキン、ズキン――。
傷む胸。
もしかしたら、気付いているのかもしれない。