「ママー、あのおねえちゃん泣いてるよ?」
視界は少しぼやけているけれど、少し遠くにいる子どもが指を指してこちらを見ている。
横では優美が慌てた様子でティッシュを差し出してきた。
「これじゃあ私が泣かせたみたいでしょーよ!!」
「アハハ……、ごめん、本当にごめんね」
受け取って零れ落ちる涙を拭き取る。
だけど、緊張の糸がプッツリと切れてしまったのか、涙腺は決壊して中々止められない。
「まったく仕方ないなぁ」
優しく背中を擦り始めた優美の手に、少しずつ気持ちが落ち着いていく。
上下の手の動きが呼吸と重なって、視界も晴れてきたら、
「私こそ、ごめんね」
メールで送ってきた内容と同じことを、私の目を真剣に見つめて言って苦笑した。
涙拭き取ってよなんて言いながら、その場に立ち上がって大きく伸びをする優美。
振り返り見下ろし、
「本当は分かってるよ、紗夜香が私のこと、友達だって思ってくれていることぐらい」
「優美……」
風になびく髪を押さえた優美は、今度は視線を上に向ける。
「けど、やっぱ悲しかったんだよね。携帯もハル君のことも教えてくれないし。
信用されてないのかなとか、私には教えたくなかったのかなとか、そんなこと考える自分が嫌でさ」