少しだけ、殻を破れた気がする。
人目も気にせず大声で叫ぶなんて、今までの私からだったら考えられないこと。
それでもこの声が、この思いが、優美に伝わらないとまったく意味はないんだけど。
また、出てくれないのかな。
唇を噛んで諦めかけたその時、
「近所迷惑だし」
二階の窓が開いた。
片手でクリームを抱いて見下ろす優美は苦笑して、またその窓をゆっくり閉めた。
「あっ、待って!!」
そんな言葉も届かず。
ようやく会えたと思ったのに、と肩を落とす。
すると、玄関のほうからクリームの激しい鳴き声が聞こえてきた。
ドアが開く。
鍵を閉めて私に近づく優美。
ドキドキと心臓がうるさい。
手足が震えてくる。
門を開けて、私の前に立った優美は、
「紗夜香、変わったね。あんな大声出すからびっくりしたじゃん」
クスクスと笑って歩き始めた。
久々に聞いた優美の声に、鼻がツーンとして涙腺まで緩んでくる。
ただ話しかけられただけなのに、それだけで凄く嬉しかったんだ。
「優美、本当にごめんね」
「ん」
「私……優美のこと友達だって思ってるから!! 本当に大事な友達だから!!」
正面を向いて歩く優美に向かって、私は今まで言えなかったその想いを、必死に伝えていた。