傷つけたくないモノ。

失いたくないモノ。

誰にだってそんなモノがある。


笑顔の裏に隠された私よりも大人な三人の過去。

傷ついて傷つけて、それでもお互いがお互いのことを好きだから、過去を抱えながら今も一緒にいることを選んでいた。


……私も、そんな選択をしたい。

誰だって怖いんだ、傷つくのは。

誰だって恐れているんだ、傷つくことを。


だけど、今を恐れて行動しなければ、大切な人とのこれから先の未来は訪れない。

本当に大切なら、つらいことでも乗り越えなければいけない。


今勇気を出して傷つくか、逃げて一生後悔するか。

そんなの決まっている。

分かりきった答えだったね。



「優美……。出てよ」



三人と大学で別れた私は、ハル君が送ってくれるという言葉を断って、一人で決着をつけにきた。

自分のしたことは自らの力だけで解決させないと、きっとずっと変わることができないと思ったから。


これで何度目だろう。

相変わらず出てこない優美だけど、微かに聞こえた「キャン」と吠えたクリームの鳴き声。

二階の窓にかかるカーテンに見えた動く影。


いつもだったらここで帰っていただろう。

だけど。


パチンッ――。

両手で思いっきり頬を叩いて気持ちを奮い立たせる。

息を大きく吸い込んで。



「優美ーっ!! ごめんねー!!」