携帯を持つようになって、その利便性から今の生活において欠かせないものとなった。

だけど、大切なことは声だけで済ませたくない。

顔を見て、思いを言葉にして、向き合う。

颯平とも優美とも……。


テスト期間中は勉強に専念したいし、してほしいからと、会わない私と颯平。

相変わらず普通にメールが来るけれど。

今度会う時までに、何らかの結論を導きださなければならない。


何度か家に足を運んだけれど、確かに留守の時もあったけど、家から出てこない優美。

一度呼び鈴を鳴らすだけで、避けられている現実に傷つきたくなくて逃げ帰る私。



「早く行かないと学食閉まるぞ」

「あーっ、本当だ! 急ごっ」

「紗夜香おいで」



ハル君に手招きされて、傍に駆け寄る。

重苦しい雰囲気を察して、助け船出してくれたのかな。

それぐらいタイミングがよくて救われた。



「呼び捨てしちゃってやーっらしー」



そんな声にハル君と同時に振り返ってみれば、調子に乗った亘さんが望さんに思いっきり頭を叩かれていた。

懲りない人……。