「あー……ごめんね、紗夜香ちゃん」
遅れてきたことを謝っているのかと思いきや、隣にいた望さんが頭を下げた。
ますます首を傾げていると、
「本当に亘がごめんね。話し聞いたの、あの日強引に連れて行こうとしたんでしょ?」
その言葉で、あの日のことを言っているのだと分かった。
望さんに頭を押さえ込まれ、亘さんはこれ以上ないってほど深く頭が下がっている。
ちょっと申し訳ない気持ちになって、私は口を開く。
「あの……。私こそ、ついて行こうとしてしまってごめんなさい」
「紗夜香ちゃんが謝る必要ないって!!」
「でも」
「亘が前面的に悪いんだから。それに、この前は私も自分のことで頭いっぱいになって、紗夜香ちゃんに直ぐに謝れなくてごめんね」
強い人だと思った。
私にはない強さを持っている。
彼氏がナンパした相手に対して、こんな対応できる人なんて見たことない。
私だったら嫉妬で狂って、相手の人まで憎んでしまいそうだから。
「こういうことって、面と向かって謝らないと気が済まなくて」
「あっ……本当にもういいので、頭、上げてください」
ようやく解放された亘さんは、頭を上げると私を見て苦笑した。
私も違う意味で苦笑していた。