「あっ、亘」

「どこ?」

「あっち」



助け船のような言葉にホッと肩を撫で下ろす。

ハル君が指差したほうを見れば、



「また、あいつは……」



隣から低い声が聞こえたかと思うと、亘さんのほうへと駆け出して行った。



「……いつもなの?」

「……まぁな。あれだけは治らないんだろうな」



ため息混じりに後ろ姿を追うハル君。

ギャル系の女の人に腕を掴まれて、何だか鼻の下を伸ばして、まんざらでもなさそうな雰囲気の亘さんが遠目に見える。

ナンパもするし。

浮気もするし。

何で……望さんは亘さんを選んだのだろう。

ハル君のほうが大事にしてくれると思うのに。


そっと見上げてみたハル君は、まだ視線をあっちに向けている。



「……まだ、好きなんだ」



届かない声が、私の胸に突き刺さる。

颯平のこと忘れているわけじゃない。


だけど……。



「ほらっ、早くおいでっ!!」



望さんの威勢の良い声に視線を戻してみれば、思いっきり耳を引っ張られてこちらに近づいてくる、相変わらずな亘さん。

見た目は悪くないんだけど。

あの性格は無理。



「ほらっ、ちゃんと謝って」



なぜか私の前に差し出された亘さんに、立ち上がって首を傾げる。

バツの悪そうな表情をして、頭をポリポリと掻いていて。