「こうしてからかったりして。あの頃と何も変わっていないんだよなー」
パッと手を離したハル君はその場で大きく伸びをした。
そして顔を向けると、さっきまでとは打って変わり、真剣な眼差しで私を見据える。
「悩みのない人生なんてないよ、いくつになっても抱えるものはあってさ。誰かを傷つけたり傷ついたり、悩んだり苦しんだり、その時はつらいけど……。
大切なものに気付かせてくれる。そこから逃げ出さずに向き合えば、見えてくるものがある」
そう。
私もそう思った。
だから頑張ろうとした。
だけど……
傷つきたくなくて逃げ出した。
「きっと、大人になんて一生なれないんだよ。だけど、変わることはできると思うから。
本当に失いたくないモノや大切なモノがあるなら、行動を起こさないと。一生後悔するよ?」
ハル君は空を見上げた。
つられて私も見上げてみる。
「俺は……」
「うん……」
「望と別れて、二人がヨリが戻ってよかったと思っている。あの時があるから今がある。つらい時もあったけど……二人とも好きだから、仕方ないんだよな」
空には星が微かに浮かび上がっていて、その傍で月も輝き始めていた。