先にハル君が部屋を出て、家を出た。

そして、親と顔を合わせないように気を遣いながら、私もさり気なく家を抜け出した。



「ハル君っ!!」



団地の階段を駆け下りて少しした所で、腕組みをして待ってくれていたハル君に駆け寄る。



「その顔バレなかった?」

「うん……。こんな顔じゃハル君に泣かされたみたいだよね」

「だよなー」



クスクスと二人で笑い、どちらからともなく歩き始める。

さっきの話の続きが聞きたくて、この涙で濡れた顔を親に見せられなくて。

そして、まだ一緒にいたくて。



「さっきの続き、教えて」



ハル君も私が抜け出して会うことを拒否しなかった。



「紗夜香って、本当にいつでも一生懸命で可愛いな」

「あっ、まっ、また人をからかって!!」

「俺はいつでも本気だけど……。ククッ」



泣き腫らした目にきっと真っ赤な顔。

それが可笑しかったのか久々に含み笑いなんかされて、私はハル君の背中を何度も何度も叩いた。


暫くはされるがままだったハル君だけど、不意に私の手を掴んだ。

驚いて体が固まる。

視線が逸らせなくて、ドキドキと高鳴る鼓動。

フッと緩んだ口元。



「ガキだろ?」

「えっ?」