優美……。

颯平……。


大切な人を大切に出来なくて。

今もまだ現状から逃げている。



「私も先生みたいに、早く大人になりたい」

「は?」

「誰も傷つけないようになりたいよ……」



ポロリと口から本音が漏れた。

いろいろ思い出してしまうと涙腺まで緩んできて、下唇をギュッと噛んで堪える。

そんな顔を見られたくなくて、後ろを向いて俯いた。


バカ、バカッ……。

またハル君に迷惑かけてしまう。

それを分かっているのに、溢れだした感情を抑えきれなくて、平静も装えない。


私の状況を知らないハル君。

知っていたところで、こんなこと言って何になるの?

あまりに情けなくて自分を卑下していると、



「そのままでいいから、少し聞いて」



背中越しにハル君の柔らかな声が聞こえてきた。

少し落ち着きを取り戻す心。

首を縦に振って頷いて、耳を傾ける。



「俺もな、そんな風に悩んだことあったんだ」



ため息混じりの声が、静かに部屋に響いた。