それからは自然と勉強に集中できた。
悩みは何一つ解決していないけど、心穏やかに過ごせる。
ハル君という存在が。
ハル君が与える影響力が。
私にとって大きくなっていっている。
「このノートとった子ってかなり頭いいだろ?」
集中すれば勉強はスムーズにはかどって、あっという間に終わりの時間が迫る。
キリの良いところで終わらせると、毎回五分ぐらいは時間が余って、こうしてハル君と話しをする。
「そうなの、香里奈って凄く頭良いの。学年首席だし!! なのに気取ってなくて、休んだ私の為にわざわざノートまでとってくれて」
テスト範囲の参考にと、香里奈がとってくれたノートをハル君に渡していた。
それを改めてパラパラと捲りながら、ハル君は感心して頷いている。
「本当に要点絞ってまとめられているし。いい友達持ったな」
「うん」
「大切にしろよ。学生時代の友達って本当に一生ものだと思うし」
そう言うハル君の顔に一瞬陰りが見えて、だけど直ぐに微笑んでいた。
まるで昔を悔い懐かしむような、そんな感じで。
目の前に差し出されたノートを受け取り、私はそこから手を動かせなくなっていた。
思い出してしまったんだ。
大切な人たちのことを……。