「紗夜香のいい所はね、真面目で素直なところ。不器用で何にでも一生懸命で、もっと上手く立ち回ってもいいんじゃないかって思うほどバカ正直で。
そういうところが危なっかしくて放っておけなくて、つい構ってしまいたくなるところ」
「あっ……。ありがと」
真剣な眼差しでそんなことを言われて、胸の鼓動が激しくなってくる。
ダメだって思っても鳴り止まなくて、その激しさは止まることを知らない。
顔が赤くなっていくのが分かる。
「そういう顔、あまり好きな奴以外に見せるなよ?」
え?
ハル君の手が伸びて頬を覆う。
ドキドキと、急速に加速する胸の鼓動。
体が壊れるんじゃないかって。
ハル君にも伝わっているんじゃないかって。
気が気じゃなくなって。
「ひぇんへぇい」
先生って呼んだ、はずだった。
もう、いっつも最後はこれだ!!
「痛いってば!! もう、バカ!!」
つねってきた頬の手を払い除け、ハル君を睨み付ける。
そこまで痛くなかったし、怒っているわけでもないけれど。
膨らませた頬もバカって言葉も、構ってもらえたことが嬉しくて出た言動。
まるで子どもだよね。
「はいはい、ごめんな」
優しい眼差しで私を捉えて笑うハル君に、心を動かされる。