頭の整理も心の整理も何一つできなくて、テスト初日を迎える。
頭の片隅に置かれていた知識を使って、ただひたすら問題を解いていた。
「今日の試験で分からなかったところは?」
「分からない」
何を解いたかも、何が解けなかったのかも、何一つ覚えていなくて。
目の前にある問題を、流れに従って一つずつ解決していっただけだった。
ふと、目の前に黒い影が伸びてくる。
「っ、いったぁ……」
「人の話は目を見て聞く」
「ごめんなさい」
デコピンされたおでこを押さえて俯く。
会いたいけれど会いたくなくて、それでも会ってしまう。
「ねぇ、先生……」
どうすればいいの?
目を見てしまうと想いが募りそうで、うまく視線も合わせられない。
導き出した答えに向かおうとしていたのに、些細なことでまた立ち止まって挫けてしまう。
強くなりたいのに。
逃げたくないのに。
ハル君といると手を差し伸べて欲しくなる。
「私のいい所ってどこ?」
シャーペンを置いて膝の上に両手を乗せる。
突然突拍子もないことを聞いたから、さすがのハル君も驚いて返答に困っているのかな。
沈黙に困って少しだけ顔を上げて見ると、バッチリハル君と目が合った。
「やっぱ今のなし! 忘れて」
急に恥ずかしくなってしまって我に返る。
勉強も上の空でこんなこと聞くなんて、ハル君も呆れるに違いないってそう思ったのに。