電車を降りると、眩しい日差しが容赦なく照りつけてきた。

暑さのせいなのか緊張のせいなのか。

それは分からないけれど、手には汗が滲みだす。



『紗夜香? 体、良くなった?』



コール音もすぐに、携帯からは颯平の声が聞こえてきて、



「うん、元気になったよ。心配かけてごめんね」



内心凄く緊張しながら言葉を紡ぎだす。

周囲を注意して、見回しながら歩いていく。



『そっかーよかったー。月曜からテストだろ? 頑張ってな』

「ありがと……」

『あっ!! テスト終わってからでいいからさ、週末どこか遊びに行こう』



……見つけた。



「うん、分かった」



遠めに視界に捉えたその姿に、私は壁に隠れて様子を伺う。



『じゃ、約束な。部活の予定が分かったらまた連絡するから』



何でここに足が向いたのかは分からない。

電話をかけてきたってことは、部活中でもなくて昼ご飯の時間だろうって思った。

土曜の昼は高校の近くのコンビニで、よく昼ご飯を買うと聞いていたから。

会えるだなんて期待はしていなかったし、面と向かって会うつもりもなかった。


ただ、気になってN高近くに来てしまった。


表情が僅かに読み取れるぐらいの距離。

コンビニの前の交差点で、信号待ちをしている颯平。


電話の時の声は明るくて元気で、この前の出来事が夢かと思うほどの振る舞いだったけど。

通話を終えた颯平は、顔を歪ませて携帯を凝視していた。