香里奈……私の変化に、また気付いていたみたいだったな。
ぼんやりとそんなことを考えながら苦笑する。
外の景色はいつもと同じようで、よく見れば些細な変化がある。
看板が変わっていたり、アドバルーンが空に浮かんでいたり。
以前より木々が生い茂っていたり、花を咲かせて街を色付かせていたり。
こうしてのんびりと、外を眺めるのも久々だった。
小さな変化。
同じように、私の中に芽生えた小さな変化。
逃げ出したい気持ちと奮い立たせる勇気。
二つが葛藤して、悩み苦しむ。
答えを導きだすのは誰でもない自分自身なのだから、今はまだ一人がよかった。
弱いから、誰かに甘えてしまいそうで。
弱いから、誰かに逃げ出したくなりそうで。
だから……。
その時だった。
電車の揺れとは違う振動が、スクールバッグから伝わってきた。
取り出した携帯を開き、ディスプレイに表示された名前に息を呑む。
凝視して固まって。
バイブが止むのを待って。
今、電車の中だから、後でかけ直すね――。
そうメールして、深呼吸をする。
バイブに呼応した胸の鼓動を、静かにゆっくりと落ち着かせる。