小さな勇気もあっという間に砕け散る。
人は簡単には変われない。
それを身を持って嫌と言うほど痛感した。
夜が更けて朝が来て、いつもと変わらず時は経ち、日常は変わりなく訪れる。
仲の良いクラスで、今が楽しくて、そこに優美がいないだけ。
そんな生活にも慣れてしまうのかな……。
「香里奈ちゃん、紗夜香ちゃん!! 今日ランチに行かない?」
土曜の午後。
授業も終わり香里奈と帰っていると、後ろから英実に声をかけられた。
「で、英実は何を教えて欲しいの?」
「あっ、バレタ? ちょっと古典で分からないとこがあってさー。それと数学も。それと……」
「いいよ。四時までなら付き合ってあげる」
「ありがとー香里奈っ!! ランチ奢るから」
ボーっと二人の会話を聞いていると、香里奈に顔を覗き込まれ、
「紗夜香はどうする?」
「あっ、えっと……私はいいや。休んでいたから遅れているし、一人で勉強する」
今は誰かと一緒にいる気になれなくて、一人でいることを選ぶ。
駅で二人と別れて電車に乗り込み、窓際の席に座り肩肘ついて外を眺める。