激しく脈打つ心臓。

緊張に押し潰されそうになりながら、意識を集中させて手足を動かし向かう先。


バイト先にお詫びにいったのとはまた、訳が違う。

まだ数ヶ月のバイトと、数年を共に過ごしてきた友達。

年月の積み重ねって凄い。

たくさんの思い出と、そこから生まれた情。

もちろん、年月が浅くたって深まることもあるけれど……。

それが大きければ大きいほど、失いたくないと思う気持ちが比例して、そして躊躇させる。


薄暗くなった辺りには、家の明かりが漏れ始めていた。

私の家から歩いて二十分。

中学校の前を通り過ぎ、大通りを反対側に渡って一本路地に入る。

右手側に見える二つ目の白い壁の家。

それが、優美の家……。


反応が怖くて足がすくむけど、気持ちを奮い立たせて近づく。

二階の優美の部屋に明かりが点いていて、今、いることは確実。

よしっ。


ピンポーンッ――。


こういうのは勢いが肝心。

悩んだって仕方ないから、呼び鈴を思いっきり押してみた。

目をギュッと閉じて返答を待つ……けれど、いくら経っても誰も出てくる気配はなかった。