不思議なことだった。
公立受験に落ちて挫折を味わって、あれだけ人生終わりだの生きていても意味がないだの言っていたのに。
今は、このクラスで過ごす高校生活以外考えられない。
嫌で嫌で仕方がなかった。
公立に落ちて私立に行くだなんて、考えられなかった。
だけどもし、楽しかった中学生の頃に戻れたとして、私は……また挫折を味わってでもこの高校に、このクラスに来たいと思う。
どんなにつらいことがあったとしても、どんなに嫌なことがあったとしても、いつしかそれもいい思い出になる。
ハル君が言っていたことの意味、少しだけ理解した気がする。
「紗夜香帰るよー」
ドアの隙間から香里奈に呼ばれ、慌てて荷物を持って教室を出る。
香里奈という大切な友達に出逢えて。
「紗夜香ちゃん、また明日ー」
「また明日ね、バイバイ」
クラスのみんなに出逢えて。
そして……。
「紗夜香、また何か悩んでるんでしょ?」
「えっ……分かる?」
図星を指された私は、両手で顔を覆う。
どれだけ、分かりやすいんだか。