「おっ、穂積久しぶりだなー。体調はもういいのか?」
HRでは担任の内田先生にもそんなことを言われ、
「はい。もうすっかり良くなりました」
「それはよかった。テストも近いしなー、オチオチ休んでられないぞ? まぁ、穂積なら大丈夫か」
「いえ……、頑張らないとやばいです」
「おいおい!! 頑張ってくれないとクラスの平均点下がるじゃないか!!」
冗談交じりに笑いを誘い、そんな内田先生に「先生ひどーい!!」と言う声が飛び交う。
「よしっ。それなら、誰か代わりに学年一桁になってやるってやつはいるか?」
クラスの視線は一斉に香里奈に集中する。
それを落ち着いた様子で、
「私は前回同様、満点目指してやるのみだから。一番取るつもりだし」
「そーだ。結城はもともと一桁なんだから、それ以外のやつが入らないと、な?」
ハッキリと言い切る香里奈に、他のクラスメイトに問い掛ける内田先生。
無言になるクラスメイト。
誰も内田先生と目を合わせようとせず、白々しくそっぽを向いている。
「やっぱ、穂積頑張って」
どこからか、そんな男子の声が聞こえてきた。
「あ、ははっ……」
「こらっ!! 男子ももっと闘争心剥き出して頑張らないか!」
苦笑しながらも、日常に戻ってきたんだと実感する。
特別進学クラスと言っても、ギスギスした感じも嫉みもいじめもなく。
みんなが仲良くて、クラスにいることが楽しい。
恵まれた環境の中。
この学校で……このクラスで過ごせること、本当によかったと心から思うようになっていた。