『紗夜香、月曜から中間テストだろ。頑張れよ』
「うん、頑張るね。じゃあ……また月曜に」
『あぁ、じゃあな』
通話が終わった時には、もう団地の前に戻ってきていた。
大きく息を吸って、顔を上げてみる。
家の中に籠もっていた時にかかっていた靄(モヤ)が、少しずつ晴れていく。
思い切って外に出てみれば、今まで悩んでいた自分がバカみたいに、光が差してくる。
「……頑張る」
殻を破って外に出て。
例え誰かを傷つけたとしても、自分が傷ついて嫌われるとしても。
私は失いたくない大切な人たちと、向き合わなければならない。
結局、ハル君の言葉に勇気づけられたね。
背中を押されたね。
“頑張れ”
その言葉が差す意味さえ違えども、私にとっては十分すぎるほどの言葉だった。
この先がどうなるかなんて分からない。
分からないから、今を大切に。
まだ、どうすればいいかは分からないけれど、何もしなければ現状は変わらない。
団地の階段を駆け上がる。
一歩踏み出す。
そう。
自分が犯した過ちは、自らの手で解決しないといけないんだ。