家庭教師の先生と生徒。

そんなことは痛いほど分かっていた。

この関係が終われば、私とハル君を繋ぐものもなくなる。

会えないどころか連絡さえ取れなくなって、過去の思い出へと変わっていく……。



「ハル君、本当にありがと。迷惑かけちゃってごめんね」

『だから、もういいって。俺こそ、この間は怒鳴ってごめんな』

「ハハッ……あれは怖かったな」



私を見つけたハル君は、駆け寄って私の心配を一通りし、何もなかったのだと分かると、

物凄い形相で怒鳴ってきた。

それは、あんな遅くに外にいた私のことを心配したから。

それに、心配していた両親の気持ちを考えろって注意されたから。



「けど、私の為だよね。怒ってくれて嬉しかったよ」

『プッ。変なやつ』



全ては私の為に。

本気で怒ってくれたんだ。


これは後でハル君が教えてくれたことだけど。

もう少し私と連絡が取れなければ、私を探しに行って、それでも見つからなければ警察に……と両親は考えていたらしい。


小さな子どもじゃないんだから、少し門限を過ぎたぐらいで外に探しにいくのは、過保護すぎるんじゃないかとか。

それでも携帯に出ないから、心配で不安が募っていくだとか。

両親も私のせいで、悩んで葛藤して。


それでも家に戻ると、ハル君が見つかったと家に連絡していたとはいえ、何事もなかったかのように振る舞う両親に頭が上がらなかった。