そうそう。昔、お母さんによく言われたっけ。
『話す時はちゃんと人の目を見て話しなさい』って。
なんてことを突然思い出したのは、今のこの状況のせい。
「“亘(ワタル)”って言うんだけど、あいつ俺の友達で、今日はみんなで遊びに来てて」
未だに視線をしっかり合わせて話しを続ける彼に、私は目を泳がせながら適当に相槌をうつ。
胸がドキドキと煩いから直視できないの。
頭の中ではグルグルと思考が回り続ける。
「で、亘の彼女も一緒に来ているのに」
「はぁ……、ん?」
んんっ?
今、彼女って言った?
「女癖悪いし何度も浮気繰り返すし。あいつも悪いけどついていく女もどうかと思っていてね」
要するにさっきの男は、彼女いるのにあんなことをしているってこと?
私も彼氏いるから今日の行動を顧みると、あまり人のことは言えないけど。
あの男は常習犯?
「で、あんたもそんな女なんだって思って」
「そう、ですよね……って、ちっ、違います!!」
じょ、冗談じゃない!!
自慢じゃないけどまだバージン捨てていないし。
いや、あんな行為怖くて踏み切れない。
慌てて反論する私は、いつの間にか彼と視線を合わせていた。
少し目を丸くして私の様子を見ていた彼は、
「アハハッ」
思いっきり笑い飛ばしてくれた。