「あっ……この前はありがとう」



初めて自分からかけた電話に緊張して、名乗りもせずに話しを始めた。



『ハハッ。紗夜香に迷惑かけられるのには慣れたから、気にしなくていいよ。で、今日学校は?』

「あー、えっと、休んでて」

『ふーん、そっか。……って、話はそれだけ?』

「あっ、うん。あの時は迷惑かけたのに、お礼さえ言えなかったから」



相変わらず律儀で真面目なんだなって笑われて、返す言葉もなく力なく笑い返す。

三日前、公園で一人ずっと座り込んでいた私を、見つけてくれたのは……。



『あまり親に心配かけるなよ?』

「はい、気を付けます」



ハル君だった。

どうやら夜の11時を過ぎても帰ってこない、連絡のつかない私を心配して、親が電話をしたらしい。

もちろん、優美の家にもかけたみたいだけど、誰もいなかったらしく。

そう言えばあの日は、両親が家にいないって言ってたから、私のせいで優美は出る気力もなかったのだろう。


冷静な判断に欠けていた母親は何を思ったのか、その日たまたま家庭教師で来ていたハル君にも連絡をしてしまった。

そして、ハル君も律儀に探しに来てくれたのだ。



「何でそこまでしてくれるの?」



そう聞いた私に、ハル君はこう言ったよね。



「大事な生徒だから。最近様子もおかしかったから、心配して当然だろ?」