両親の包み込むような温かな優しさ。

高校の友達が改めて教えてくれた、友達の大切さ。

それに、日は浅いのに私の体調を心配してくれたバイト先の店長に友達。


人ってこんなにも温かいのに、自らの行動で傷つけてしまった。

自分のことで精一杯だった私は、颯平を除けて、優美を含めて誰一人、中学の友達に携帯を教えていない。

少し前まで同じ校舎で、笑って、泣いて……かけがえのない時間を過ごしてきた仲間なのに。


離れることは思っていたよりも、私にとって長く遠い距離だった。

近くて、遠い。

新しい環境が、古い環境を劣化させ、思い出へと変えていく。



「そんなの、悲しいじゃん」



答えは自然と導きだされていた。

頭では分かっている。


失いたくない大切な友達。

もし失うことになっても、正面から向き合わなければいけない颯平。


立ち上がり歩きだす。

取り出した携帯の着信履歴から、発信ボタンを押す。

数回のコール音が耳に流れ、切ろうとした瞬間。



『もしもし?』



電話は繋がった。