嘘が嘘を重ねる。

そんなこと身を持って、嫌ってほど分かっている。

なのに抜け出せない。


さすがにあの日は連絡がなかったけれど、翌日には颯平からメールが来た。

今日バイトだよね?迎えに行くから……って。


無視しようにもできない内容に頭を抱え、私は風邪で休んでるから、とメールを送った。

嘘だって分かるよね?

なのに……。



「颯平は凄いよ」



他の人を想っていると気付いていながらも、それを感じさせなくて。

傍に、いつも傍にいてくれた。

どんな思いで傍にいたの?


今も、どんな思いでメールを打って、心配してくれているのだろう。

私には……無理。


再び携帯を開いて無意識にボタンを押して、着信履歴からある人の名前を見つけて指を止める。



「ハル、君……」



望さんを想うハル君を見ているのがつらくて、胸が苦しくなった。

自然と涙さえ出てきた。

望さんと一緒にいると分かっただけでつらかったし、望さんのことを考えていると分かっただけで胸が張り裂けそうだった。


ねぇ、颯平。

颯平もいつもこんな思いをしていたの?


たくさん悩んで考えて行き着く先は、それでもハル君のことが好きだってことだった。

だけど、そこまでして私を想ってくれる颯平のこと、ハル君より好きになれたら……とも思う。