慌てて優美の手の中からそれを奪い取る。

忘れてた。

すっかり忘れてた。

香里奈がくれた、ゴムの箱の存在を。



「プッ!! 変わってないね、紗夜香ってば」



慌てる私の様子を見て吹き出した優美に、顔が熱くなっていき体温まで上昇しそうだ。

少し和んだ場に、お互いにようやく笑みが浮かぶ。


だけど、私は大きな間違いを犯していた。

それに気づくのが遅くて、取り返しのつかないことになってしまった時には、



「そんなに簡単に変われるわけないでしょ……って、優美?」



大事な友達さえも、自らが傷つけてしまう。

急に笑みが消えて顔色が変わった優美は、私の手元を凝視する。



「……紗夜香って携帯持ってたんだ」

「え? あっ」



バッグの中に入れていた携帯。

もちろんそれも地面に落ちて、それを拾って今にもバッグに入れようとした時、ゴムの箱を見つけられて。

タイミングを逃したまま、私は携帯とゴムの箱をギュッと握り締めていた。


優美はゆっくり立ち上がる。



「颯平のことも携帯のことも。私には言えなかったんだね」

「違っ」

「何が違うの? もういい……友達だと思っていたのは、私だけだったんだ」



目に涙を溜めて笑う優美の顔が、頭にこびりついて離れない。

走り去る優美を追い掛けることもできない。


一人残された公園で地面に座り込み、私はそのまま動くことができなかった。