忘れたい。
消えてほしい。
心の中から、この想いごと全部。
「紗夜香ー、優美ちゃんから電話よー」
ハル君が帰った後も憂鬱な気持ちを抱えていた私は、何もする気が起きなくてベッドに横たわっていた。
ようやく体を動かしたのは、そんなお母さんの声で。
部屋を出て保留にしてある電話の子機を持ち、再び部屋に戻って深く息を吐いてボタンを押した。
『久しぶりー!! 紗夜香元気してる?』
「うん、元気だよ」
『ね、今からちょっと会えないかな?』
「あー。お母さんに聞いてみる。ちょっと待ってて」
受話器越しの優美の声は明るくて元気で、それはさらに私を憂鬱にさせた。
自己嫌悪って言うのかな。
颯平を傷つけた罪悪感と、ハル君に会えなくなる現実に傷ついた自分。
傷つけて傷ついて、元々の元凶は自分自身って分かっているから。
何もかもが嫌になる。
「お母さん、今から優美と会ってきていい?」
「はいはい。遅くならないようにね」
了承を得た私は、優美と家の近くのコンビニで待ち合わせをすることになった。
ぐちゃぐちゃの頭はうまく働かない。
制服から適当に着替えて、床の隅に置いてあるバッグを持って家を出る。
まだ八時前だと言うのに、辺りは深夜のように真っ暗に映っていた。