忘れたいのに忘れられない。

考えたくないのに考えてしまう。

颯平よりハル君に惹かれていることを。


ハル君の言動が、私の心を惑わせる。



「先生……」

「ん?」



本当に嫌いになれたらいいのに。

できない、優しくて時に厳しくて、そんなハル君だから……。

好きなんだ。

だから、嫌いにさせてくれないハル君のこと嫌いなんだ。



「教えて」



間近にある顔を一点に見つめる。

ねぇ、ハル君。

こうしてハル君の傍にいるだけで、胸が高鳴って苦しいの。

好きだと再認識してしまうの。

どうしたら、この想い消すことができるの?



「望さんと一緒にいて苦しくなったりしない? 忘れたいって思わないの?」



冷静な顔が一瞬崩れる。

だけど、見開いた目はすぐにいつも通りに戻り、目尻を下げて私に向かって優しく微笑む。



「無理に忘れようとしても苦しいだけだったから。だから、自然に忘れられるまではこのままでもいいかって」



ハル君が見せた表情はとても切なそうだったけど、それ以上に清々しくも見えた。