二階から騒ぎ声が聞こえてくる。
それに交じってパタパタと、誰かが勢い良く階段を駆け降りてくる音がした。
慌てて体勢を整えると丁度降りてきた人影と目が合って、
「……颯平。どうしたの?」
平静を装って声をかけた。
「あっ、もう終わった? ……って何聞いてんだ、俺」
「うん。颯平も?」
「いや、そうじゃなくて」
口籠もる颯平に首を傾げる。
本当はトイレなんかじゃないって、嘘がバレてしまったのかとドキドキしながら。
「ちょ、そ、颯……」
「黙って?」
肩に手を乗せられて、抱き寄せられた体。
上から見下ろす颯平は、顔を近付けてくる。
目蓋を閉じてみれば唇に暖かい感触。
トクン、トクンッ。
体越しに胸の鼓動が流れるように伝わってくる。
“本当に颯平のこと好きなの?”
“負けないから――……”
「……っや!!」
体が、手が、反射的に動いた。
耳に残るマネージャーの言葉。
胸の奥深くにしまい込んだはずの恋心。
脳裏にハル君の顔が浮かんだ。
……見られたくないって、これ以上したくないって、心と体が拒否していた。