「紗夜香ちゃん、強すぎ」
「いやー、アハハッ」
「パズル系も格ゲーも負け知らずだなんて、すっげーな」
アハハ、ハハ。
悪気はないんだろうけど、妙に体を寄せて話す勇治くんに顔の筋肉がピクピクと、引きつった笑顔を浮かべて笑いを漏らす。
ゲーム大会となってしまったこの場で、負けず嫌いな性格が災いして全戦全勝。
もともとゲームの類は大好きで、昔よくお父さんとしていたのを、指が覚えていた。
「あーっ悔しい!! もう一回!」
「いいけど……」
「瀬菜やめとけよー。お前この中で一番弱いだろうよ」
「嫌! 私、どうしても勝ちたいの!!」
無理無理っと周りから言われ、口を尖らせて不貞腐れるマネージャー。
それでも勝負を挑んできてやっぱり負けて、肩を落として周りから慰められる。
そんなやりとりを横目で眺め、
「ちょっとトイレに行ってくる」
颯平に告げて部屋を出た。
そこでようやく安堵のため息が漏れる。
爪先をたててなるべく音を立てずに階段を降り、トイレの前まで来てその横の壁にもたれかかった。
体重を預けて少しだけ顔を上げ、瞬きさえ忘れて宙を仰ぐ。
私、一体何しているんだろう。