タイミングよく帰ってきた颯平たちのおかげで、話はそこで終わった。

部屋の中の微妙な空気を感じ取ったみたいだけど、まさか自分の話題だなんて思いもしない颯平は、



「紗夜香、何飲む? あっ瀬菜も何がいい?」



明るく振舞ってコンビニのビニール袋を広げてジュースを取り出していく。

当たり前のように私から先に声をかけてくれる颯平。



「おかしもいっぱい買ってきたし、今からみんなでゲームでもしようぜー!!」

「おっ、いいねー!! 颯平何か面白いゲームある?」



勇治くんと大和くんが勝手に引き出しを漁りだして、それをマネージャーが制止して、颯平は呆れ顔で頭を掻きながら引き出しの中からゲームのソフトを取り出す。

そこだけ、切り離されたような別世界だった。

私が入ることの出来ない彼らだけの、同じ学校だという空間。


そっとこの場から立ち去りたい気持ちを抱いていると、ふとマネージャーが振り返った。



「勝負しよ?」



手渡されたゲームのリモコンを受け取る。

どうやらパズルゲームをするみたいで、既にテレビの画面は切り替わっている。



「あなたには負けないから」



笑顔でそう言うマネージャーの目は笑っていない。

“負けないから“

それはゲームに、と言うより、颯平のことを指しているのだろう。

……負けたくない。

だけど、その気持ちとは裏腹に、勝てる気なんてまったくしなかった。