何一つ言葉が出てこない。
自分の気持ちを十分自覚してしまった今は、嘘でも違うって即答できなかった。
ううん。本当はしないといけなかった。
颯平と付き合っていくって決めたのだから尚更。
そんな自分に嫌気がさして、さらに言葉を失ってしまう。
ハル君のことが好き。
それは、颯平へ抱く“好き”という感情とは別物の、恋。
好きで好きで、押さえようとしても押さえきれない。
自分ではどうしようもなく気持ちが溢れだす。
「言い返さないってことは、そういうことなの?」
それを、今目の前にいるマネージャーからも感じてしまうのは、私の気のせいなのか。
それとも……。
「ねぇ、聞いてる?」
グッと体を近付けてきたマネージャーから、反射的に体を仰け反らす。
ベッドの端まで詰め寄られてこれ以上逃れようがなくて、相変わらず私を捉える鋭い視線が私を捕まえて離さない。
多分、マネージャーは私のことをよく思っていない。
それは颯平のことがあるからなのか、それとも何か他の理由があるのか分からないけれど、瞳の奥がそう伝えてくる。
「私、颯平のことが好き。あなたなんかに負けないから」
あぁ、やっぱり。
マネージャーの決意にも満ちたその言葉は、きっと私がハル君に抱くものと同じ。
漠然とそう思った。