とりあえず視線を合わせて見るけれど、私の口からは何も言葉が出てこない。

聞きたいことは山ほどある。

なのに、接着剤で固められたように口が開かなくて、言葉が出せなかった。


マネージャーは声をかけるだけかけて後は黙ってジッと見つめて、気まずさだけが募っていく。

その鋭い視線が痛くて、ただ隣にいるだけなのに押しつぶされそうな、そんな感覚。


時間にすれば数十秒。

なのに私は手に汗を握り、喉がカラカラだと言うことに気付いた。

既に半分ほど零してしまっているペットボトルを取ろうと、視線を逸らして床の端に置いたそれに手を伸ばす。



「ごめんなさい」



と、そんな声が背後から聞こえてきた。

後ろを振り向けば、頭を下げるマネージャーの姿。



「えっ?」



一体何のことを指すのか分かる由もなく、間抜けな声を出してしまう。

ゆっくり顔を上げたマネージャーは、相変わらず鋭い視線で私を捉える。

ゴクリ、と喉が鳴る。



「颯平から聞いたでしょ? 私と元彼のこと」